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俺は洗面所に向かい、洗面台の鏡を覗き込んだ。
茶色い髪に黒い目…俺の時は黒髪黒目だった。
これならまず俺だと気付かれないだろう。
…けど、俺は不思議だった。
この身体の本当の持ち主は今何処にいるのだろうか。
…もしいたらごめんなさいと、伝わっていないかもしれないが謝った。
また、生まれてきてしまって…ごめんなさい。
店のもう一つの扉は厨房で、やっぱりケーキ屋だったのかなと思い俺は決めた。
俺の趣味を活かしてお菓子屋さんにしよう。
もう少し内装を綺麗にして買うものを紙に書く。
俺は自分の名を捨てて、イノリと名乗る事を決めた。
この名は元の世界で飼っていた愛犬の名前だったりする。
茶色いところがそっくりだからだ。
お店の名前をどうするか考える。
ーショコラ・フロマージュー
ふとその名前が頭に入ってきた。
それはハイドさんに初めて渡したカップケーキの名前だった。
ハイドさんを想うとまた暗くなりそうだから頭を振り、名前を決めた。
…このくらいなら許してくれるかな?と思いながら…
半日かけてイノリのお店、ショコラ・フロマージュ開店準備をして…次の日、無事開店した。
城下町にはお菓子屋さんはなく、俺の店は大繁盛した。
特に甘いもの好きの男性や、可愛いデコレーション目当ての女性で溢れていた。
俺はお菓子を買い笑う人達を見て、自分のお菓子でこんなに人を幸せに出来るのかと嬉しかった。
見知った騎士も何人か訪れてびっくりしたが相手は気付いてなくてホッとした。
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