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青年は王様に頭を下げるから瞬も真似して頭を下げた。
言葉は分からないが王様は明るい人で笑っていた。
青年がなにかを言い王様が頷く。
よく分からず再び青年に腕を引かれてその場を後にした。
廊下を歩いているとさっきまでメイドさんとかが多くすれ違ったのにこの場所は青年と同じ白い軍服の人が多い。
そして一つの部屋に入る。
必要最低限のものしかない殺風景な部屋だった。
瞬から離れて青年は机の引き出しを探っているから、きっと青年の部屋なのだろう。
そこで取り出したのは虹色の飴が一つ入った小瓶だった。
青年は小瓶を持ち瞬のところに行き唇を親指でなぞられた。
ドキドキしながら口を開ければいいのだろうかと口を開けるとコロンと小瓶の中の飴を口の中に入れられた。
甘い砂糖のような味が口の中で広がりコロコロ転がす。
美味しくてすぐになくなってしまい残念に思った。
「俺の言葉が分かるか?」
言葉が分かるとこんなに通じるのが嬉しく感じるなんて初めてだった。
あの飴が瞬と青年を言葉で繋げてくれたのだろうか。
瞬が頷くと青年はさっきまでのクールな微笑みじゃなく、少し子供っぽく笑った。
それからベッドに二人並んで座り瞬は彼にいろいろ聞いた、この世界はディールという異世界だという事…勿論瞬がいた日本は何処にもない。
この異世界には別の世界から導かれて来る人間がいるらしく、瞬もそうだとすぐに分かったと話してくれた。
あの飴ももしもの時に用意していたそうだ。
瞬はとても運が良かったらしい。
青年の名前はハイド・ブラッドと名乗った。
瞬は日本で大学生だった事、声に導かれてやってきた事を隠さず話した。
ハイドは瞬の日本での出来事を一つも疑わず真剣に聞いてくれた。
それどころか「もっと瞬を知りたい」と言ってくれた。
瞬もハイドを知りたくなり、ハイドの事を聞いた。
ハイドはこの国ーイズレイン帝国ーの王直属の騎士団長らしい。
「だからハイドさんは国民に愛されているんだね」と微笑むと頬を一撫でされた。
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