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普段は人見知りの精霊だが、前に知らずに入った俺と仲良くなり姿を現してやって来る。
しかし今はイノリだ、分かるのだろうか。
「俺が瞬だって、分かるの?」
精霊は返事のように俺の周りを一周した。
俺は嬉しくなり草の絨毯のような地面に座り、持って来たおにぎりをリュックから取り出し精霊達に分け与えながら食べた。
…やっぱりこの場所は落ち着く。
空気も綺麗で余計なものがない。
誰もいない精霊だけの空間で、まだ夢の中にいるようだ。
空を眺めると雲一つない青空が広がっていた。
「ハイドさん…」
消えそうなほど小さく呟き、地面に寝転がり瞳を閉じた。
もうハイドさんの夢は見ず、リラックスして深い眠りに落ちた。
ーーー
目が覚めたらもうすっかり日が落ちていた。
精霊達は道しるべのように体を光らせて俺を出口まで導く。
トンネルは昼間でも不気味なのに夜になると更に増して不気味で早足でトンネルを抜けた。
明日からまたお店頑張ろうと決意して歩き出す。
すると誰かの話し声がしてびっくりして夜に明かりが灯るバーの影に隠れた。
…今はイノリだ、堂々とすればいいのに…まだ会うのが怖かった。
「なぁハイド、見回り終わったし久々に飲まねぇ?」
懐かしいリチャードさんの声に楽しかった日々を思い出し、また泣きそうになるが目元が腫れたら大変だから我慢する。
さっき俺は並んで歩くリチャードさんとハイドさんを見つけて隠れてしまった。
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