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弱い自分が一緒に向かうと足手まといになるからせめて御守り代わりに一つのカップケーキを渡した。
瞬の唯一の趣味であるお菓子作り、ハイドは甘いものが苦手だと言っていたから甘さを最小限に抑えたビターなお菓子を作ったら喜んでくれた。
その中でカップケーキが一番お気に入りだと言ってくれたから戦地に行く前に緊張を解してもらおうと渡した。
ハイドは大切にカップケーキが入った袋を持ち、お返しのように瞬にベコニアの花を差し出した。
ハイドは異国の地の花言葉というのを多く知っている。
その花言葉は瞬のいた世界でも使われていたものらしいが、瞬は花言葉を一つも知らなかった。
ただ、ハイドが渡してくれる花達はいつも綺麗に咲いていて大切にしたいと思っていた。
きっと、この花もなにか意味があるのだろう。
ハイドが無事に帰ってきたら、花言葉を聞いてみよう…きっとハイドの想いが詰まってる気がするから…
結果はイズレイン帝国の圧勝だった。
ハイドが先陣に立ち、敵国の兵士の半分以上を倒しイズレイン帝国の英雄と呼ばれるようになった。
ハイドが英雄になったからなかなか会えないだろう、そもそも平民以下の拾われ異界人の自分にハイドが頻繁に会いに来る事が間違っていると思った。
祝福するためにせめてお菓子を用意して騎士団員の誰かに渡してもらおうと考えた。
寂しいけどハイドの邪魔しちゃいけないと思い遠くから見守ろうと決意した。
ハイドは戦地から帰ってきて城下町はお祭りムードとなっている中、人混みの中から瞬を見つけ出して抱きついた。
周りが見ている視線に恥ずかしくなり下を向くが腕は背中に回しギュッと抱きしめた。
一週間しか離れていなかったのに瞬もハイドもとても寂しかった。
そしてハイドに耳元でベコニアの花言葉を聞いて瞬は涙した。
…ハイドに認めてもらえたあの日のように…いや、それ以上にとても嬉しくなった。
泣きながら崩れ落ちないように足に力を入れてハイドにしがみつき何度も首を縦に振ると慰めるように壊れ物を扱うような手つきで瞬の頭を撫でた。
こうして瞬とハイドは皆が祝福する恋人同士となった。
幸せだった…きっとこの世界の誰よりも…
幸せだった、はずなのに…
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