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最初はハイドも渋い顔をしていたが、瞬の真剣な顔に折れてくれた。
今ではとても気に入っているがハイドとリチャードはまだ気に入らないようだった。
小姑のように料理本が並ぶ棚を指で撫でて埃を払った。
「…早くハイドと同じ部屋に住みなよ」
「えっ!?ダメですよ、いくら恋人だからって」
同じ部屋という事は同棲という事だ。
帝国一の英雄様とただの平民なんて恐れ多い。
ずっと一緒にいられるのはとても幸せな事だと思う。
でもハイドは城下町でも城内でも人気が高いから恋人関係を認めてない人もいる中で同棲なんてしたら、自分が何を言われても平気だがハイドに迷惑掛けるわけにはいかない。
瞬は慌ててリチャードに自分がいかに平民でこの部屋が似合ってるか熱弁した。
リチャードは瞬の熱弁を聞いてるのか聞いていないのか適当に相槌をうち、不敵な笑みを見せた。
「だからさぁ、早くハイドと結婚してよ瞬様」
「…けっ、こん」
ボッと頬が一気に真っ赤になった。
リチャードはニヤニヤしながら壁に寄りかかり瞬を見る。
この世界は自由恋愛主義で種族や同性など関係なく結婚する人達も珍しくない、だから瞬とハイドが結婚しても問題はないが…気持ちの問題だ。
…恋人同士だけどハイドは瞬と結婚したいのだろうか。
勿論瞬はハイドがいいなら喜んで結婚する。
けど、初恋相手がハイドというほどの恋愛経験がハイド以外にいない瞬は恋に臆病だった。
ハイドがしたくないなら、今のままで十分幸せだからいいと思っている。
…もし、結婚を申し込み断られたらと思うと怖かった。
「俺は、無理にしなくてもいいと思ってるんです…ハイドさんも忙しいだろうし」
「…あー、ったく…アイツが早く決めないから瞬様ネガティヴになってんじゃん」
リチャードがなにかイライラしていたが瞬は首を傾げた。
ハイドはなにか決めていたのだろうか。
でもそんな話は一度も聞いていないから瞬には何の事か分からなかった。
たまにリチャードに少し嫉妬したりする。
親友は何でも知ってる気がして、自分の心の狭さに嫌になる。
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