vol.1 悔し涙

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「ピッ!ピーーー!」 試合終了の笛がなる。 スコアは62-54。 観客からはため息。 俺はその場で崩れ落ちた。 「おい!試合終了だ!並ぶぞ!おい!聞こえてるか?」 俺は放心状態だった。 そこから先のことはあまり覚えていない。 俺が覚えているのは他のメンバーが誰一人として悔しがっていなかったことだ。 帰りのバスは、俺が思っているより数百倍賑やかだった。 俺は悟った。 所詮部活は遊びに過ぎないんだと。 これまでやってきたことはただのお遊びなんだと。 何の意味もないんだと。 そう思うとなんだか自分が馬鹿らしく思えた。 周りも俺を馬鹿だと思っているだろう。 そうだ、これはお遊びなんだ。 俺の所属しているバスケ部は、三学年合わせて二十一人。俺たち三年は俺合わせて八人。 三年は受験モードに入っていたこともあってか、あまり部活には真剣に取り組んではいなかった。 一、二年はそんな三年の姿を真似するかのように適当に練習をしていた。 俺は分かっていたが認めたくなかった。 部活を真面目にやっているのは「俺」だけだった。 二年生の夏、三年生が引退した。 その年は県ベスト四まで勝ち抜いた。 俺はレギュラーだった。 次の年の俺たちは期待された。 キャプテンは俺ではなく違うやつになった。 まあ、確かに俺はキャプテンには向いていない。 俺のポジションはポイントガード。 身長が百六十八センチしかないからだ。 俺は自分で言うのもあれだが、周りを見る能力に長けている。 だから、俺は一番このポジションがやりやすかった。 しかし、言い換えれば、周りが見えるだけ。 見えたところで、そこに正確にパスを出したりするのは一概にもできるとは言えない。 二年の時は三年生のレベルが高かったため、多少なりともパスがずれても、取ってくれていた。 でも、俺たちははっきりいうと、下手くそだ。 オフェンスはプレーが続かない。 ディフェンスはみんな身長が低いため、ゴール下に入れられればほぼほぼ決められる。 バスが俺の中学校についた。 監督がなにかを話している。 聴く気にもなれなかった。 バスから降りると、拍手が聞こえた。 保護者達が学校に集まっていた。 キャプテンが代表してなにかを話している。 一応副キャプテンの俺が話す番が来た。 俺が言葉を出そうとした時、声が出なかった。 出てきたのは、涙だった。
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