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高校生の女の子は毎朝、学校へ行く前に必ず鏡で自分の顔をチェックするだろう。
佐藤朱里(さとうあかり)も例外ではなく、自分の部屋の鏡で身だしなみをチェックする。
そして、左頬に縦長の大きな傷のある自身の顔が目に入る。
左頬の傷を手の指先でなぞりながら「私はエマーのように生きる」と朱里は小さくつぶやく。
朱里は小学校4年生の時に事故に遭い、左頬に一生消えない大きな傷跡が残った。
一生消えない大きな傷跡が顔に残ると知った時、朱里は絶望した。
もう自分は一生恋愛できないと、わんわん泣いた。
親や医者は、本当に良い男は女の子を顔の傷なんかで判断しないと言ったが、朱里にはまったく信じられなかった。
まだ美人なら顔に傷があってもカッコいいかもしれない。いや、現実では美人であっても顔に傷ができたら恋愛など難しいだろう。ましてや美人でもない、平凡な自分の顔に大きな傷跡があれば、恋愛など絶望的だと朱里は本気で思った。
朱里は家にこもり、小学校に行かなくなったが、学校の先生が朱里の家に来て、ある漫画を朱里に渡した。
朱里はその漫画を読んでわんわん泣いた。今度は絶望したから泣いたのではない、心の底から救われたから泣いたのだ。
その漫画は主人公であるエマーという少女が、一生恋愛できない状態になっても強く生き、幸せになる物語だった。
女の子の人生は恋愛が全てではないということを朱里にその漫画は教えてくれた。
恋愛ができなくても強く生きるエマーを心からカッコいいと朱里は思った。
朱里は、エマーのように一生恋愛できない人生であっても、強く生きると決心した。
朱里は小学4年生のときに恋愛することをあきらめた。
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