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まだ寝ぼけたアタシの頭には、まだ寝たいと言いたそうに寝室へ向けて髪が跳ねている。
ふむふむ。と、ぼんやりしたココロの中で頷きながらテーブルに着く。
ワカメと豆腐、ネギに大根。
白味噌のおみおつけ。
卵にレタス、トマトにジャガイモ、人参、キュウリ。
エッグサラダ。あ、コーンも。
3枚切りのパン。マーガリンにハム、マヨネーズ、チーズ、ケチャップ。
ピザトースト。
ふむふむ・・・ん?
「アレ?ケチャップ?」
おかしいな、と思ったアタシの顔を見て、タイチは
「ああ、そうだ。ピザソース切れてたんだよ。今日買っておいてくれないか?」
「えぇ~…ッ!…アタシの楽しみ…」
アタシの好きなピザトースト。
アタシの好きなピザソースを切らすとはっ!
「主夫失格であります!」
「誰が主夫だよ!?居候の癖に何言ってやがる!」
「うっ!痛いトコロを・・・」
まったく。と憤慨しながら自分の朝食の後片付けをするタイチ。
アタシはテレビをつけて、足元でゴロゴロしているケイマを抱き上げた。
「ケイマちゃ~ん。人参たべましゅかぁ~?」
「猫に食わすな!お前が食えよ!」
カチャカチャと皿洗いしている手を止めて、タイチが突っ込んでくる。「言っただけでしょう?そんなに目くじら立てるコト無いじゃん。」
イチイチ真面目なヤツ。からかい甲斐があるからイイけどさ。
「早く食べてくれよ?片付かないから。」
お前は母親かっ!
「はいはーい。じゃね、ケイマちゃ~ん。」
チリン。チリチリチリン。
床に降ろすと、身震い1つして、ケイマは少しだけ開けた窓からベランダへ出て行った。
あ、凄くいい天気。
さんさんと照らす秋の朝日が、部屋の温度を少し上げている。
カーテンを揺らして吹き入れる風は涼しげ。この秋風もすぐに木枯らしに変わるんだろうな。
ぽかぽか陽気に秋の風
猫の髭を撫でつける
チリンと首輪の鈴が鳴ったら
それはきっと
秋の終わり
冬の始まり
ピザソースの無い、なんとも間の抜けたピザトーストを頬張りながらふと思い至る。
「あ、湯タンポ買わなきゃじゃん。」
「ストーブの灯油、どうする?」
「コタツの布団、何処にしまったっけ?」
「そろそろお鍋が食べたいねぇ~」
寒がりな居候。冬支度を懸案中。
ー間抜けなピザトーストー
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