みさととのぶひろ

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 のぶひろが中学校に入学する日。  彼はあの学生服姿で、家の玄関先で家族と写真を撮っていた。 「あらー。信広くん、格好よくなっちゃって」 「それがまだまだ大きくてねー、ブカブカなのよー」  親同士が話し始めたので、手持ちぶさたになったらしいのぶひろが私の方に近付いてくる。相変わらず、学生服を着ているだけでのぶひろがのぶひろじゃないみたいだった。  なぜか緊張する。 「みさと、ひとりになったからって、登校途中で寄り道しちゃダメだからね」  どう声をかけたらいいのかわからず、言葉に詰まった私に対し、のぶひろは本気で心配した顔をしてそんなことを言い出した。 「し、しないよっ」 「ほんとに? だってこの前も僕が止めたのに猫を追いかけて……」 「う、うるさいうるさい! なんでまだ覚えてるの!」  もう半年は前の話なのに。  ちなみに、猫を追いかけるのに夢中になった結果、盛大に遅刻してのぶひろ共々先生にこっぴどく叱られた。  のぶひろとは登下校の時もいつも一緒だったけど、今日からそれもなくなる。 「心配だなぁ……でも、小学校とは方角が真逆だし……」  方角が同じだったら途中まででも一緒に行くつもりだったのかな。  そうでないことを少し残念に思う。 「あら、信広くんにそこまでしてもらわなくても大丈夫よ」  いつのまに話を終えていたのか、お母さんが傍にやって来ていた。 「ごめんなさいねぇ。信広くんにはいっつも迷惑ばかりかけて……」  お母さんはそんなことを言う。  私が遊んであげてるのに。 「いえ、僕がみさとと一緒に遊びたいだけですから」  私が思わずむっとしている間に、のぶひろはさらりとそう返していた。それは私からはもちろん、お母さんから見ても大人びた対応だったのか、目を丸くしている。 「あらまあ……信広くん、大人になったのねぇ」  元から落ち着いてはいたけれど、こんなに大人びてたっけ。  私が不思議に思っていると、のぶひろがこっちを見た。
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