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「ところで、君は何をしているの?朝の当番は、円阪さんだけのはずだよね?」
先生が穏やかな口調で後輩に尋ねる。穏やかなんだけど、なんだか棘が潜んでそうな声で、背筋が震える。でも、先生はまだ頭を離さないから、距離を取れない。
「いや...その...。」
「...フラれたからって相手にあたるのは、人として最低で醜い行動だと思うよ。」
先生の、冷たい声。普段は穏やかにしか話さないから、そのギャップも手伝って、物凄く冷淡に聞こえる。後輩もそうなのか、息を飲む音が、とても重く聞こえた。
「あれ?図星?適当に言ったのに。」
そう言って、先生はハハッと、乾いた声で嗤う。
「さぁ、もう行きなよ。未練がましいのは、嫌われるよ。」
先生がそう言うと、彼の急いで立ち去る足音が聞こえて来た。先生が私を抑え込んでるせいで、彼の表情は見えなかった。
「円阪さん。」
...というか、まずい。佐古先生と二人っきりは、とてもまずい。
「悪口言われたらさ、ちゃんと怒らないと駄目だよ。」
先生がやっと解放してくれたから、反射的に先生の顔をじぃーと見てしまう。整った先生の顔は、怒って眉毛を曲げていても、やっぱり整っていた。
「あー...でも、そんなに大したことは」
「...言ってたよ。本当、円阪さんは自己評価低すぎ。」
はぁ、とため息をつく先生。一体、いつから聴いていたんだろう。もっと早く出てきてくれたらよかったのに。いや、それはまずいんだけど。
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