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そのまま視線を合わせて来た先生の瞳は、熱くて真剣だったから、心臓が簡単に跳ねてしまう。まずい。
「円阪さん、俺のこと避けないでよ。...別に、取って食おうってわけじゃないんだから。普通に、教師と生徒、しようよ。」
先生は、自嘲気味にふっとわらった。
先生は、いいかもしれない。大人だし、いつも余裕だし。だけど、私はまだ子どもで、いつだって余裕がない。だから、いつも遠くから眺めて、話さなくて、二人っきりになんかならないようにして。そうしないと、意識してしまうと、もう、どうしようもないから。
黙る私に、先生は、はぁあ、と大きなため息。そのまま少し屈んだから、私と目線がピッタリ合う。目の前に、先生の綺麗な顔がある。クラクラする。心臓の音が、大きくなる。
「まどかちゃん、もう、いい加減にしてほしい。気付いているんなら、ちょっと酷過ぎる。俺はまどかちゃんが思ってるほど大人じゃないし、余裕なんてないんだ。」
いつも余裕な先生の瞳が、不安げに揺れた。いつもは先生に見つめられた私がドキドキして、先生は余裕そうに笑ってるから、なんだか立場が逆転したみたい。まぁ、私は、顔になんて出さないんだけど。
でも、それが、先生を不安にさせているんだろうな。
「俺のこと、よく見てくれてるのは、ただの気まぐれ?本当は、いつまで経ったって、か...」
「先生。」
先生が、私をじぃーと見てくる。いつも余裕に見える先生の瞳には、不安がゆらゆらと揺れている。もしかしたら、気付いていなかっただけで、瞳の奥はいつだって、不安が隠れていたのかもしれない。
「先生は、私の先生です。私は、先生の生徒です。」
「...。」
「でも、その関係は、卒業するまでです。だから、私は、卒業したら、彼氏を作ることを考えようと思います。」
「...それって。」
先生の瞳が、キラキラと輝く。見える期待に、私は、精一杯余裕そうに微笑んだ。
「考えるだけですよ。」
余裕な先生と、振り回される私。
その立場が本当に逆転するのは、そう遠くない未来の話なのかもしれない。
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