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「……お待ちしていました」
ペンダントが光を放ったと思えば、私はいつの間にか例の花園にいた。彼女は、仮面を外した姿で私を見ている。
……私は、あの祭壇へと歩いた。この場所が即ち、出入り口であるはずだ。
「生きるのですね。貴方を苦しめた、現世で……」
ああ、そうだと私は頷く。私を苦しめたあの世界にこそ、用があるのだ。
もはや、逃げぬ。狩人に狙われた獣のままでは終わらぬ。
「……さようなら、もう会うことはないでしょう」
魔王すら討ち、人への情も絶った私は、最早やすやすと死に至ることはない。そう彼女には分かっていたのだろう。
私は頭を下げた。すまない、と、これでも謝ったつもりであった。
祭壇の上に立つと、光が溢れ出した。振り返って、再び彼女の顔を見る。何故だか、少し悲しげな顔に見えた。
……私は、かつて魔王が占拠していた、王城の門の前に立っている。鉄兜も、鎧も、全てを脱ぎ捨てる。そして、硬直していた声帯を無理やり震わせ叫んだ。
ただ、叫んだ。
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