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 私は皆に、「勇者」と呼ばれた。  私は彼らと言葉を交わすことはなかった。人のフリをするため、声は出すことはできなかったからである。首を動かして「イェス」か「ノー」か、意思の疎通はこれ以外にすることはなかった。それでも、十分に皆は私を褒め称えてくれた。  果てに私は、生みの親を討ち取った。  私を生み出し、虐げた者共を討伐した。人々からの歓喜の声に包まれ、私は良い心地であった。  しかし、それも長くは続かなかった。  私はこの上なく、惨めな気持ちであった。  守ってきた者たちの手で、私は死と絶望の谷間に突き落とされた。世が平和になって、しばらく経ってのことだ。私はかつてあの魔王の下で味わった苦しみを、再び経験することとなったのである。  私が恐ろしくなったのであろう。それは、よく知っている。  だが、私はただ産まれて来ただけだ。ただ、生きようとしただけである。何故、奪われねばならぬ。何故……。
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