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私は、ただ首を横に振った。……私はもう、どちらも選ばぬ。もはや、あの現世にも、安息なる眠りの中にも、私の望み結末は無い。私が欲しいものは、そのようなものではないのである。
墓守の乙女よ。私は貴女に用がある。
「……貴方は」
貴女は、何故あの仮面を外したのであるか?
あの夢で、そして今も、何故貴女は、仮面を外した姿で、私を待っていたのであるか?
「あまりに、愚かです。貴方も、私も」
貴女は、何を望んでいる?
やがて彼女は語る。
与えられた役割を果たし終えるまでの命。生まれ落ちて以来、死ぬまで背負い続けねばならぬのです。
この世界には守り手が必要でした。墓前に花を供え、弔う必要がありましたし、ここに埋葬された死者の遺品を持つ者などが、惹かれあうようにこの世界に迷う込むことがあったからです。剣は、守り手の証であり、元々は追い払うためのものでした。
……いずれ、最初の墓守ノエルが「私たち」を作りました。魂を操る禁忌の魔術を使い……人形に力と魂を与え、役割を背負わせたのです。
彼女が今どうしているかは分かりません。私が何人目の墓守であるのかも。体が朽ちたら、次の墓守に剣を託し、延々とこの世界を守ってきたのです。
しかし、貴方が現れました。
私たち墓守は、心を持ってはなりません。ただ無心に、死者に尽くすのが私たちの存在の意味です。
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