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貴方と魂を繋げ、記憶を見ること。許されざることであると分かりながら、私はそれを行いました。
貴方が哀れでした。そして、私や朽ちていった「私たち」が、ただ哀れでした。
「私は愚かです。貴方が夢を見たのであれば、それは、私が無意識に、見せたのかもしれません。墓守の道具である、ペンダントを通じて」
彼女は目を伏せた。剣を握る手にも力がこもっておらぬ。その目から涙は出ておらぬが、泣いているかのように、私には見えた。
花の優しい香りが満ちている。星々も、強く頭上で輝いている。
「哀れな私を見つけてもらいたかった。だから、仮面を外したのです。ですが……貴方に伝えることが出来たのならば、これ以上は望みません」
彼女は再び私を見据える。
「さぁ、お選びください」
……私は、それでもノーと言った。
「……貴方を惑わせるようなことをして、申し訳ありません。ですがどうかお選びください。貴方が後悔せぬ道を」
違う。そうではないのだ。
私は、彼女の方へと歩み寄った。……斬られるためではない。しかし、確固たる決意に則っての行動である。
「まさか、貴方は……」
魂の声は、彼女には筒抜けである。そのまさかだ、と私は鉄兜の内で笑みを浮かべた。
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