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私は手を差し出した。
「本当に……それが貴方の望みなのですか」
貴女には私の魂を感じられるはずである。これが疑いの余地のない本心であるとも、簡単に分かるはずだ。
「……貴方は、また苦しみを背負うことになります」
それでも良い。
貴女を見つけたのが私ならば、私を見つけたのは貴女なのだ。
生まれて初めて、私は優しさを知った。……自分のためではなく、純粋に私は、貴女のためにこの道を選びたい。この怪物に、そんなことができるのであれば、それ以上の望みは無いだろう。
不死身の怪物にしか、出来ぬことがあるのだ。
「……ありがとう。これで墓守たちの、長い苦しみが終わります」
……安らかな眠りを欲していたのは、実のところ、彼女だったのだろう。
さぁ、その剣を、私に寄越してくれ。
彼女を抱きかかえ、私はペンダントに願った。行く先は、あの名無しの墓である。……やはり、空っぽの人形であるようだ。ローブを着込んでいても、こんなにも軽いとは。
しかし、確かな心と魂があった。
彼女は、私に剣を渡した途端、すぐに眠りについた。おそらく、墓守の役目とは、次の墓守に剣を受け渡した瞬間に満了となる、ということだろう。ロールに従ってしか生きることを許されぬ、哀れな存在である。
私の墓に名が書かれていなかったのは、幸いなことだったかもしれない。おかげで、同じく名前を持たぬ貴女のために、ここをあけ渡すことができるのだから。
彼女の埋葬が済むと、私は少しの間その場に立ち尽くした。
守ってみせよう。貴女が、安らかに眠れるように。
私は、この場を立ち去ろうと、踵を返した。
その時である。
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