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 次に、ここはどうやら相当の広さがある。背の低い緑の草が一面に生えた大地。その上に、平板型の白く頑丈そうな墓石が、見渡す限り規則正しく立ち並んでいて、その果てが分からぬほどである。私が鎮座しているのは、そういった中の一角、一つの墓石の前であり、私が目を覚ましたのもそこだ。……正確には、目を覚ましたのは「土の中」で、息苦しさのあまり、堪らず地上に這い出てきたのであるが。  墓石は無数にあるが、その見た目には一点を除いて大きな違いは無いようだ。異なっている一点とは、刻まれている名前のことである。どうやらちゃんと、それぞれの墓石には一人ずつ、対応する死者がいるということらしい。  では、私が「埋葬されていた」墓、すなわち、今鎮座しているこの墓石には何と書いてあったか。これがどうにも不可解であった。なんとそこには、何も書かれていなかったのである。  何故こうして生者のような振る舞いができるかはさておき、私が骸であるならばここが私の墓であると思っていた。しかし、その墓には私の名が刻まれていないのであった。  ……だいたいこのようなところだ。つまりは何も無い。この名無しの墓石を目印にあちこち歩いてもみたが、まるで分かることは無い。唯一の手がかりが彼女だ。  それぞれの墓の前には美麗な青い花が供えられているが、これは彼女が持ってきたモノである。  白ローブを着込み、丈の長いブーツや手袋をして、鉄の仮面をつけた女。顔も、肌も見えぬ。しかし被ったフードの隙からは、わずかに金の髪が覗く。手には青い花の束を持ち、静かに歩いて、一輪ずつ、墓石の前に供えてゆく。     
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