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 今まで、彼女の姿を見たのは二回だ。  初めは、土から這い出てすぐのことである。私はわけもわからず辺りを見回していたが、そこに彼女が現れ、透き通った声で言った。 「貴方、生きていらっしゃるの?」 私は彼女のその異様な容姿を確認したが、ただ黙っていた。すると彼女が私に歩み寄る。 「……ご安心ください。いずれ、全てを思い出すでしょう」 そう言って、墓石に花を供えると、すぐに去っていった。  二度目は、この墓地を歩き廻って万策尽きた私が、再び名無しの墓石に帰って途方に暮れていた時だ。遠くから草を踏み倒す音が聞こえ、しばらくして彼女が現れた。私は目覚めたばかりの頃とは違い、冷静な気持ちで彼女の姿を見ることができた。  墓前の花を新しいものに取り替えながら、彼女は私に問うた。 「まだ、思い出せぬのですか?」 ああ、と今度こそ私は答えようとした。ついでに、貴女は何者なのか、と問おうとも思った。しかしながら、声帯が硬直しているのか、掠れたうめき声だけが溢れる。ならば仕方あるまいと、私は首を縦に振って、イェスの意を示した。 「そうですか。なんと、かわいそうに。安らかな眠りが欲しくなったら、私に仰ってください。貴方を救うことが、墓守の役目です」     
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