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彼女は、私の方を振り向いた。
「墓守の私には、貴方の魂の声が聞こえます。貴方はただ、己を知るために、私を待っていらしたのですね」
私は顔を上げ、静かに頷いた。彼女が問う。
「私には、壊れてしまった貴方の記憶を、戻すことができます。ただしそのために、私も貴方の記憶を見ることになります。それは、本来なら許されぬこと……本当は貴方が自分で思い出すのを、待つつもりでした。ですが貴方が望むのなら構いません。よろしいですか?」
再び頷く。
では、と彼女は、私にそっと近寄る。そして、再び両手を祈るように合わせる。
少しずつ視界が暗くなり、私は、夢の中に落ちてゆくような心地になった。
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