いつか絶対、言ってやろうと思ってた

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「千夏ちゃん、今日のタイムリーヒット、しびれたなぁ~惚れ直したわ!」 「あのセンターゴロ、めっちゃかっこよかった! 俺、また惚れ直した!」 「千夏ちゃんはほんま、スクイズうまいよなぁ。いつ見ても惚れ直すわ」  翌年には竜斗も小学校に入学し、すぐさま頭を丸刈りにし、ブカブカのユニフォームを着て少年野球チームに加入。週末になると一緒に練習と試合に明け暮れる日々が始まったというのに。  竜斗は相も変わらず、ことあるごとに千夏に例の台詞を投げかけてくる。一年、二年と順当に進級し、もうちゃんと言葉の意味もわかっているだろうに、いつも満面の笑みで恥ずかしげもなく堂々と、言ってくるのだ。  年々、千夏は対応に困るようになった。  身体の発達こそまだまだだが、千夏はもう十分に思春期にさしかかる年齢(とし)になってきている。クラスの友人たちとは好きな人や憧れのタレントの話題で盛り上がるし、少女漫画や恋愛映画に夢中になる、れっきとした乙女なのだ。  ――これって、どうやって返したらいいんやろ? ほったらかしでいいんかなぁ。  かといって、告白されたわけでもないのに、こっちから断りいれるのもなんか恥ずかしいし……。  もんもんとしたままの千夏にはお構いなしに、二人が六年生と三年生になっても竜斗は変わらない。  二人の話題は野球のプレーについてのことがほとんど。そのなかで、ことあるごとに千夏に惚れ直したと、竜斗は明るく笑うのだった。
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