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神殿の事情
「こちらをどうぞ」
「どうも」
レイアスは一人の神官が置いたカップを取り、一口飲んだ。
何の味もしない。ただの水だ。
ここは神殿。酒も紅茶もなければ果汁を入れた味つき水も提供されない。清く透き通った水こそ彼ら唯一の飲み物で、常に清貧であれと説く神官らしいと彼は思う。
「冒険者ギルドから依頼があると聞きましたが、何かお困りでしょうか?」
テーブルを挟んで真向かいに座る神官長リーゼは聞いた。
「実はセルニア遺跡に潜っていた冒険者たちが一昨日に新しい区画を発見したとギルドマスターに報告があったんです」
「ほう」
興味深そうな声を出したのはリーゼの横に座る神官長補佐。名はベネロという。
初老に差し掛かったこの男は経験の浅い神官長を様々な面で支えている。
「今までは通路が行き止まりと思われていたのですが、壁の向こうに隠し通路があったんです」
「ということは遺跡祓いの依頼ということですね?」
「はい」
補佐役とリーゼはすぐに理解し、話が早くて助かるとレイアスは思った。
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