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その手が光に触れると戦士の体も一瞬同化し、甲冑から何かが抜け出ると今まで体を支えていたものを失い、ミイラは真の躯になって地に伏した。
「皆様、この地を浄化して頂けることに感謝致します」
「滅相もございません」
リーゼは召喚された魂に言った。
「彼の魂をよろしくお願いします」
レイアスは古代の英雄に心から敬意を覚え、その魂が安らぎを得ることを願った。
「もちろんです。さようなら、新しき時代の戦士と神官たち」
黄金色の輝きが消失し、静かな遺跡が戻った。
レイアスは安堵の息を吐く。
「よかった。まさか姫って言葉だけで召喚できるなんて思わなかったよ」
「私も少し不安でしたが、祈りが通じてよかったです」
リーゼも内心は冷や冷やしたが、死者の魂を救済したいという心があれば天界にも声が届くと確信している。そうでなければ神官は魂の救済などできない。
「俺はあの戦士を斃すことしか考えてなかった。神官、いや、リーゼは本当にすごい人だよ」
付き添いの神官たちも彼に同意し、リーゼの顔が赤くなった。
恥ずかしがる神官長を連れてレイアスはさらに進むことにしたが、その思考にはモヤモヤした奇妙なものがあった。
(なんだろう?何か気になることがあったような……まあ、いいか)
彼は心の中の引っ掛かりを保留した。
その浅慮の報いはすぐにやってきた。
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