神殿の事情

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「この部屋は……?」  大きな部屋を見てレイアスたちは首をかしげた。  霊廟の浄化を完了し、その奥にある重厚な扉を開けると床に巨大な魔法陣が描かれている奇妙な空間があった。その陣は少し薄くなっており、扉の大きさから宝物庫だと思っていたレイアスは失望と疑問を覚え、隣のリーゼに意見を求める。 「何だと思う?」 「この陣は……ひょっとして封印の術式?」  彼女の声に呼応するかのように魔法陣は赤い光を点した。  そして獣のような唸り声が部屋に響く。 「何なんだ!?」 「いけません!皆さん、下がって!」  リーゼが光魔法を唱え、赤く光る魔法陣の上に新しい陣を出現させた。 「ここにあるのは封印術です!劣化してる上に私たちが来たせいで内部の何かが目覚めてしまいました!」 「封印って……まさか!」  レイアスは召喚した王女の言葉を思い出した。  騎士団長が戦った魔物は封印された。その封印というのがこの部屋なのでは。  先程に浮かんだ疑問は封印のことだったと理解し、同時に自分の不注意を罵りたくなった。王女も注意してくれたらいいのにと思わないでもないが、百年以上を経て封印術がどれだけ劣化するかなど魔術師でもわからないだろう。     
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