神殿の事情

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 彼は思い出した。神官は騎士や冒険者に守られながら遺跡を浄化し、調査や発掘はしない。だから通常の遺跡祓いでは神殿に規定の料金を払うだけで追加報酬は発生しないという理屈だ。清貧を重んじる彼らが財宝の分け前をもらうのは外聞が悪いという理由もある。 「今回に限ってこの慣習を曲げていただくことはできませんか?」 「え?」  彼は驚きつつも補佐役の言いたいことがわかった。遺跡の区画が隠されていたということは財宝部屋などがある可能性は高い。冒険者や発掘家にとっては胸が高鳴る場所だ。その利益を神殿にも分けてほしいということだろう。  神官のおかげで調査できるのだから主張は間違ってはいないが今までの慣習から考えれば異端なことで、なにか事情があるのだなと彼は思った。まさか寄付が減って資金難になったのだろうか。 「ベネロ様、それは!」  驚いたのはレイアスだけでなくリーゼもだった。  様をつけるところから見るとリーゼにとって階級上は部下でも個人的には上司のようなものらしい。 「神官長、これは良い機会だと思います」 「しかし神官が財宝を求めるなど……」 「今は事情が事情です。光導神もお許しになっていただけると信じます」  二人の間で対立が生まれている。  さすがに彼も聞かないわけにはいかなかった。 「事情を聞いてもよろしいですか?」 「内密にして頂けるとお約束していただけるのなら」 「約束します」     
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