神殿の事情

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 レイアスはベネロに約束し、ちらりとリーゼを見ると彼女は不承だと顔に書いていた。  補佐役は感情を出さず事務的に説明を始める。 「実は別の地方にある神殿に建て直しが必要になっているのです」 「建て直し……ああ、けっこう古いものもありますからね」  レイアスは合点がいった。神殿は建設から50年や100年どころではない年月が過ぎたものが珍しくない。老朽化するのも当然だ。 「何度も塗装して表面だけ新しく見せたことで内部の劣化に気づかなかったそうです。見栄えが悪ければ神殿の威信にも影響しますので」  外見の乱れは精神の乱れ。神官は服装や神殿を常に綺麗に保つよう心掛けている。二人は口に出さないが神殿に問題があれば寄付も下がるだろうと彼は察する。 「そのせいでひび割れが多いことに気づかず、最近になって大きな亀裂が生じたのです。建築家に見てもらったところ神殿全体に劣化と歪みが生じており、まるごと立て直したほうがいいと言われたそうです」 「その建設費が必要というわけですか」 「はい。現在、寄付を募っておりますが、神殿全ての再建築となればかなりの費用がかかります。一刻も早い完成を目指すために他の神殿からも援助を求めているという次第です」 「なるほど……」     
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