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人はこの世に別れを告げる時までに、何を手に入れることが出来るのだろう。
それは、身の周りを飾る沢山の物だろうか。
誰かを喜ばす、多額のお金かもしれない。
もしかしたら、ただ・・自然の景色を心に抱いたまま、息を引き取ることかも。
なんであれ、
心の安らぎを得た、と思えるのなら・・それでいい。
~確かなモノとはなんだろう??~
フン、人間の欲望なんてものは、計り知れなくて~キツネ如きには悩む事すら馬鹿馬鹿しい。
唯一確かな事は、クリスが紅(くれない)と共に2年の年月を過ごしたという事実だ。
あいつの余命は、確か・・5年か・・いや6年だったかな。
振動に揺れる座席で丸まっていたキツネは、窓の外をひたすら眺める隣の少女を見上げた。
ヘリの騒音防止用のヘッドホンに隠れて、表情は見えない。
肩で揃えた真っ直ぐな黒髪が小刻みな振動に合わせて揺れている。
どこかに属する事を証明するセーラー服。
胸元の紅いシルクのスカーフは、一般的なポリエステルの物とは違い
クリスのこだわりを表している。それは、兄だった者から最後の誕生日に贈られた品。
今は、この世界には・・いない人間だが。
『ええ~い、いい加減、酔っちまうだろ!!』
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