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紅~人が刀を選ぶのではなく
刀が持ち主を、使い手を選ぶ。
それが、古(いにしえ)の妖刀といわれる所以である。
別名~意思を持つ刀『月紅刀』(げっこうとう)
月の輝きを刀身に取り入れ、それを蓄えることに依り
使い手が妖しの不思議な力を発揮することができる~
協会から、そういった説明を受けたのは
クリスが持ち手として『紅』に選ばれた時だった。
それを特別な儀式だとは誰も思っていなかった。
ただ骨董品である刀の鞘から刀身を抜くものだと。
これはパフォーマンスだ、位にしか考えていなかった。
多くのガーディアンは大げさに力を込めて引っ張ってみせた。
刀身をスラリと抜く事が出来なくて、一様に首を傾げてもいたし、苦笑いする者さえいた。
実のところ、そんなに難しいことではないだろうに、と。
けれど、皆は知っていたのだ。
これを抜くことなど、出来るはずがない・・と。
なぜなら、昭和の大戦後に使い手が現れて以降、一人も選ばれていないのだから。
ガーディアンに任命されるための認証式~程度にしか捉えていない。
ところが、である。
『紅』の前にクリスが進み出た時は、違った。
スルスルと勝手に刀身自身が浮き上がってきたのだ。
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