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頭の中で?それとも向こう側から?ザー、っという、一昔前のテレビのような酷いノイズが鳴っている。それはまるで雨の音のようにも聞こえ、ますます私を震え上がらせた。響く――ただただ、響く音色。見えてはいけないものが見え、聞こえてはいけない音が聞こえている。――これ以上触れてしまったら戻れなくなる。逃げなければ。そう思うのに――体は覗き穴に固定されたかのように、動いてくれない。
やがて。
ずるり。
何かが、這うような音が聞こえて。
視界を、長い長い黒い髪が、過った。まるで影のような長い、長く、長い――。
『ひいいいっ!!』
そして、眼。
誰かの眼が、視界をいっぱいに、塞いで。
腰を抜かした“私の耳元で”その声はしたのである。
『 タ ス ケ テ 』
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