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『そゆことー。その壁の向こうあたりってわけ』
にやにやしながら言う先輩。笑い事じゃない。思わず私は想像してしまっていた。潰れかけ、みしみしと音のする小屋の中で一人。真っ暗な空間で、飢えと乾きに苛まれながら助けて助けてと繰り返す少女――きっと、自分達と同じくらいの年頃だったのだろう。
思わず、青い壁を凝視してしまった。その向こうからじっと、こちらをねめつけるような視線を感じた気がして。
『彼女は青い色が嫌いだったんだってー。だから、青い壁を立てておけば安心ってわけ。理解した?』
理解した、ではない。
『つまり、壁の向こうにはまだ…その女の子の幽霊が閉じ込められてる…ってことで、おっけ?』
『おっけー』
『ええええ…』
そんな話は初耳だ。どうしてそんなことを知っていて平気でいられるんだ。
私が心底嫌な顔をしたのを見て、彼女は心の底からおかしそうに笑って見せたのである。
『やだー変な顔しちゃって?怖い?あ、怖いんだー?』
完全におちょくられた。そう気付いて私が怒り出すのは、この三秒後のことである。
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