あおい、あおい。

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 ***  そう。話がここで、終わるのならよかったのだ。  残念ながらこの件には続きがある。私は三年生になって一人で最後まで部室の片付けをすることが増えた。さすがに、夜遅い時間ともなるとあの千穂先輩もさっさと家に帰っている。皆に手伝ってもらっても良かったが、私は部長として――なんとなく、責任感のようなものがあって、部活の時はいつも鍵当番と片付けを積極的に担うようになったいたのだ。  ある日の片付けの時。私は気付いてしまったのである。いつもの青い壁のはしっこが、剥がれかけているということに。正確には塗られた塗料の一部が剥がれかけているのだ。風もないのに、びらびらと揺れる青い破片。私は――予感がして、おそるおそるそちらに近づいていってしまったのである。  わかってるとも。こんなわかりやすいフラグを回収するなんて、本当にどうかしてるって。  それでも、私はまるで誘われるように、その欠片に手を伸ばしてしまったのだ。――私が触れた瞬間、今まで耐えていたのが嘘のように――その塗料は、剥がれてしまっていた。  青いペンキで塗られているだけなのである。本来塗料が剥がれても、その向こうは板で塞がれているはずだったのだ。しかし、その青色の剥がれた向こうには、覗き穴程度の穴があいていたのである。――私は凍りついた。逃げなければ、と本能が警鐘を鳴らしていた。それなのに。  思っていることとは裏腹に、頭は徐々に穴に近付いていくのである。その向こう側を見るために。青色で、封印されていたその空間を確かめるために。――好奇心だったのか。それとも、その時既に私は、何かに取り憑かれていたのだろうか。 ――…!  穴の向こうに見えたのは、明かりがついた部屋だった。でも、プレハブ小屋とは違う。壁が木でできていて、ボールのようなものや、バットのようなものがいくつも立て掛けられているのが見えるのだ。  体育倉庫。  千穂先輩の言っていたキーワードが頭を過った瞬間、私は理解した。 ――今、見ているのは。見えてはいけない、ナニカ、だ。
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