あおい、あおい。

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あおい、あおい。

 霊感なんてものに縁のない私だが、過去に一度だけ――本気で怖い思いをしたことがあるので話しておきたいと思う。  私がまだ、青春の真っ只中!と呼ばれるピッチピチの女子高生だった頃だ。――こんな死語も真っ青な表現をしておいてなんだが、残念なことに私には浮わついた噂なんてひとつもありはしなかった。頑張りに頑張って、そこそこの偏差値の高校に合格したはいいが。友人たちはみんな揃って別の学校に行ってしまい、中学からの知り合いは一人もいなかったのである。  そして、私は――今でもさほど活発な方ではないが。当時は輪をかけて大人しく、内向的な人間だったのだ。それは、運動が極めて不得意だったというのもある。体育の成績は温情でやっとこさ2を貰えるという有り様だった。筆記試験がなければ、それこそ追加認定試験でお呼ばれしたかもしれないと思うくらいにドン臭かったのである。――運動が得意な人間にはわかるまい。全力で走っているのに、“サボるな!やる気あるのか!”と叱られる人間の気持ちなど。  まあそれはさておき。  そんな私だから、入る部活は当然文化部に限られる。  私は漫画が好きで、笑われる程度とはいえ絵を描いてはいたものだから、入部したのは漫画研究同好会だったのだ。――ちゃんとした漫画部があるところはどうしてこうも少ないのだろう。小さくても良い同好会だった。漫画は日本の誇るべき文化だというのに、ここまで根倉扱いされなければならないのが今でもどうしても納得がいかないのである。
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