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その日の朝食は夏らしく冷や麦だった。
ちなみに冷や麦と素麺の相違点は麺の太さだけで、もともとは同じ食べ物である。
朝食を食べたあと、二人は縁側でだらけていた。
すると霊夢の親友で魔法使いの霧雨魔理沙が姿を見せた。
魔理沙「おっす、邪魔するぜー!」
萃香「魔理沙、おはよ…」
霊夢「魔理沙は相変わらず元気ねえ…。妬ましいわあ」
魔理沙「いつからお前はパルスィになったんだ?」
霊夢「見りゃ分かるでしょ。あまりに暑すぎてもう何もやる気が起きないのよ」
なるほどな、と魔理沙は灼熱の太陽を見て思った。
外の世界ではしきりに地球温暖化が叫ばれているらしいが、その問題が幻想郷にも波及してきているのかもしれない。
魔理沙「そういえばさっき華仙に会ったんだがな。なんかアイツ、“近々異変が起きるかもしれないから気をつけろ”みたいなことを言ってたぜ」
霊夢「それは私も聞いたわ。さっき華仙が忠告に来たのよ」
魔理沙「果たしてどんな異変になるのかねえ?」
霊夢「私の身の回りのものに何か起きそうな予感がするわ」
魔理沙「賽銭箱が盗まれるとか?」
霊夢「さあ?そこまでは分からないけど。でももしそんなことがあったら、理由がどうであれ必ず盗んだ犯人を見つけてコロスわよ」
『コロス』と言った霊夢の目はまるで獲物を虎視眈々と狙う肉食獣のように鋭かった。
魔理沙は心の中でくれぐれもそのような悲劇が起きないことを願った。
そのとき、バサバサと羽音がして三人の前に漆黒の翼を生やした少女が舞い降りてきた。
文々。新聞を発行している鴉天狗の新聞記者・射命丸文である。
文「おはようございます!いやあ、今日も暑いですねえ」
霊夢「アンタの羽が黒いから余計に暑苦しいわ…」
ぐてっとした体勢のまま霊夢が言った。
文「あややや、何だか元気がありませんが…夏バテですか?」
魔理沙「見ての通りだ。暑さでやる気が起きないんだとよ」
文「それはいけません!近々異変が起きるかもしれないというのに…」
そう言って文は「号外」と大書した新聞を一部取りだした。
文「これ、“文々。新聞”の号外です。詳しくはこちらをご覧ください!」
『それでは!』と眩しい笑顔を残し、文はあっという間にどこかへ飛び去っていった。
魔理沙「異変が起きるかも?どういうことだ?」
魔理沙は文が置いていった号外に手を伸ばした。そこには『異変の前触れか!?紅魔館から食材が消える!』の見出しが!
魔理沙「おい、霊夢!紅魔館に備蓄されていた食材が残らず消えたってよ!」
魔理沙はバタバタと音を立てて霊夢の元に駆けて行くも。
霊夢「あーそー。私はテコでも動かないわよー」
霊夢はご覧のありさまだ。卓袱台に頭を突っ伏し、物体と化している。
ちなみに萃香はつい先ほど、少しでも涼しい場所を求め博麗神社を出ていった。
魔理沙「なんだよ、気分が盛り下がるなあ。調査に行こうぜ!調査に!!」
霊夢「暑いから動きたくないのよ」
何とか霊夢の手を引っ張り外へ連れ出そうとするが、霊夢は微動だにしなかった。
魔理沙「はぁ…仕方ない。ちょっと待ってろ、いいもの持ってきてやるから」
そう言うと魔理沙は箒に跨り、颯爽とどこかへ飛んで行った。
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