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春
―――春の博麗神社。
参道沿いの桜は満開で、まるで桜色のカーペットが敷かれているかのようだった。
間もなく日が昇る。神社の境内では何羽かの雀と夜雀のミスティア・ローレライが朝の挨拶を交わしていた。
雀「チュンチュン(みすちー、おはよう。)」
ミスティア「TNTN(おはよう、清々しい朝ね。)」
…と、居間のほうから障子が開く音がした。その音に雀たちは驚き、飛び去ってしまった。
縁側に姿を現したのは、この博麗神社の巫女・博麗霊夢である。
すでに巫女装束に身を包んでいる霊夢は朝日を浴びながら大きく伸びをした。そして同居している鬼の伊吹萃香に声をかける。
霊夢「萃香、そろそろ起きなさい!」
萃香:(-.-)zzZ・・・。
霊夢(仕方ないわねー。)
霊夢は萃香を放置して境内の掃除をすることにした。
~~~~
箒を手にした霊夢は早速、境内の掃除を始めた。日射しは暖かいものの風はまだまだ冷たく感じられる。
参道に散った花びらを掃きながら『もうすっかり春ねえ』などと思っていると、上空に妖精のリリーホワイトが姿を見せた。
リリー「霊夢さん、春ですよー!」
霊夢「ええ、分かっているから静かにしてちょうだい」
リリーホワイトは春告げ精(=春を告げる妖精)で、興奮すると所構わず弾幕をばら蒔く癖がある。
『朝から弾幕をばら蒔かれるのはたまらん』と思った霊夢がそうリリーホワイトに言った。
リリー「そうですか!ならいいです。それでは♪」
リリーホワイトは『春ですよー!』と連呼しながらどこかに行ってしまった。
霊夢「ふぅ…。」
霊夢が掃き掃除を再開したそのとき、誰かが神社の石段を登ってくるのが見えた。
?「藍しゃま、紫さま、早くー!」
彼女は橙という化け猫だ。少し遅れて、九本の尻尾と獣耳が特徴的な少女と白い日傘をさした長身の女性が来た。
九尾の少女は八雲藍という狐の妖怪で、橙は彼女の式神である。日傘の女性は八雲紫といい、種族はすきま妖怪である。ちなみに藍は紫の式神だ。
紫「おはよう、霊夢」
霊夢「…こんな朝っぱらから何の用?」
紫「あら、ご挨拶ね。せっかく顔を見に来てあげたというのに」
霊夢「大きなお世話よ…」
橙「藍しゃま、ちょっとお散歩してきますね!」
藍「ああ、いいとも。行っておいで」
橙は縁側に腰かけていた萃香とばったり鉢合わせた。
橙「あ、鬼だ!逃げろー!」
萃香「鬼ごっこかい?負けないぞー!うがー!!」
二人は縁側から拝殿に出て、藍の周りを回り始めたが、しばらくすると橙が転んでしまった。
藍「ちぇえええええええん!」
紫が萃香をスキマで紫の前に飛ばした隙に、藍は一瞬で橙の元に駆け寄った。
藍「大丈夫か?痛くなかったか!?」
橙「痛かったけどもう平気です。藍しゃま、ありがとうございます!」
藍「うん、橙は強いな。さすがは私の式だ!もっと自信を持っていいぞ!」
橙「はい!」
~~~~
霊夢「萃香、大丈夫?」
萃香「あいたたた…。さっきので腰を痛めたかも」
紫「霊夢」
霊夢「医者に見せたほうがいい?」
萃香「そこまでしなくて大丈夫だよ」
紫「ねえ、霊夢ったら」
霊夢「分かったわ。後で湿布貼ろうね」
萃香「うん」
紫「……貴女たち!」
霊夢&萃香:Σ(゜∀゜;ノ)ノ
紫「無視は良くないわよ?」
萃香「ごめんごめん、気づかなかったよ」
紫「コホン、まあいいわ。そしたら私は帰るから何かあったらいつでも呼びなさいね」
霊夢「ええ」
紫は一人で帰ってしまった。しかし、話しをしている藍と橙は気づいていない。
しばらくして橙が紫がいないことに気づいた。
橙「あれ、藍しゃま。紫さまがいませんよ?」
藍「本当だね。霊夢、紫様がどこ行ったか知らないか?」
霊夢「紫?さっき帰ったわよ。スキマを使ってね」
藍「何だって!?…橙、行くぞ!」
橙「ああ!藍しゃま、待って下さい!(汗)」
二人は猛スピードで石段を駆け降りていった。
霊夢「やれやれ…(汗)」
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