第1章

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「先生、聞いた事ねえのか。働かざる者、食うべからずって」 嫌味を言ったのは、しばらくの日が経った頃だった。言った小弥太自身は、その言葉に先生が食いついてくるとは思っていなかった。 「ああ、聞いた事くらいはあるな」 「やっぱりお気楽だな。おれなんかちいせえ時から庄屋に言われてる」 「ふむ。小さいときから。そういえばお前、親は」 「…………」 先生は、ちらりと明り取りに目をやって、そうか、と言った。続けて「手がお留守だぞ」と言った。小弥太は聞こえるように舌打ちをした。 「小弥太、働かん者は、食ってはいかんかね?」 「当り前さ。働いて、その代わりにおまんまを頂けるのさ」 「しかし、食わんと生きていけんからな」 「じゃあ、働かねえと、生きちゃあいけねえんだよ」 「では、赤子はどうだ? 働かなくてもおまんまを食わせてもらえるぞ」 「そりゃあ、そのうち働いてくれるからだよ」 「なるほど、お前、存外に聡いの」 「ゾンガイってなんだ?」 「では、動けなくなった年寄りはどうだ?」 「十分働いてくれたからだよ」 「なるほどなるほど。では、病人は? けが人は?」 「……治ってくれるのを待つ間はいいんだよ」     
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