第1章

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次の日も、小弥太は先生の所に行った。先生は、少しこころここにあらずという感じで、いつもならポンポンくる仕事の指示が遅かった。 「先生、今日はどうかしたか?」 「……うむ」 「腹でもいてえか?」 「ふん。まあ……そろそろ潮時か、と思ってな」 「しおどき?」 きょとんとする小弥太に、ふいに先生は口に指を当てた。 「しっ。小弥太。お前、そこの奥に入ってろ」 「ここ?」 「そうだ。お前が作ったそれの後ろだ」 土間の一角を隠すように作られた板は、先生が命じて小弥太自身が作ったものだ。 「でも、なんで?」 「いいから。声を出すんじゃないぞ」 なんなんだよ、と思いながら小弥太は板の後ろに隠れる。隙間から見ると、先生が大刀のさやをつかんでいた。さすがに息をのむ。 (なんだ? なんだ、なんだ?) バタン! そう思う暇もなく、小弥太がいつも苦労している引き戸を蹴り倒して、刀を構えた侍が飛び込んできた。3人だ。 真ん中にいる侍が、初めになにやら長ったらしい名前のようなものを言ったが、小弥太には聞き取れなかった。たぶん、先生の名前なのだろう。続けて右の侍が、悲鳴のような聞き苦しい声で「テンチュウ!」と言った。なんのことやらわからない。     
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