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先生は大刀の鞘を払っている。小弥太の目には大して強そうには見えなかった。顔も青ざめて見える。
「天誅か……。私は、天に誅されるほどの大それた働きはしとらんぞ」
「やかましい!」
「天は私に生きる《権利》をくれたはず。それをお前らは奪うのか?」
《ケンリ》……神様の約束。昨日の問答が思い返される。
「で、お前らには私を殺す《権利》があるか? どうだ?」
「なにをわからんことを!」
言いながら先生は右に左に少しずつ動く。3人組も合わせてじりじりと動く。
「ふむ、面白いな。私に生きる《権利》があって、お前らに私を殺す《権利》があったとしてだ、それはどっちが強いのかな? 同じ強さかな? 同じ強さなら、なんでも貫き通す矛と、どんなものも防ぐ盾。すなわち矛盾というやつだ」
切っ先をゆらゆらとさせる。
「神様の約束。どっちが強いのか、ここで試してみるしかないのかな? 待て待て、逆に私にはお前たちを殺す《権利》はあるのかな?」
長広舌をふるう先生に対し、3人組は黙り込んで剣に力をこめる。先生はにやりと笑った。
次の瞬間。
先生は一足飛びに右に跳ねて、鴨居にピンと張られた縄を断ち切った。ガタン!という大きな音と、もうもうたる土煙を立てて、3人の侍の足元が崩れ去った。
「ぐわっ!」「なんだっ!」「ガッ!」
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