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「男は大切な人を守るために強くなるんですよ。人を怖がらせるためじゃない」
静かな口調だったが、私には分かる。
中野くんはすごく怒っているんだって。
「何だよ、お前!」
苛立った声で叫んだ先輩を、中野くんは鋭い目で見下ろす。
「日南子の彼氏ですよ。厳しく育てられて、その理由が小さな頃はわからなかったけど、今ならわかります。俺は日南子を守るために強くなったんです。これからも、強くあり続けたい。先輩は、誰を守るために生まれてきたんですか?」
その後、物音一つしない静寂が降りた。
みんなの心に、中野くんの言葉の重みが沁みていったのだと思う。
そして、先輩は舌打ちを残して、教室を出て行った。
ホッと息を吐き、胸を撫で下ろす。
だけど、今度は中野くんの大きな手に手首を捕らえられ、次の瞬間、私の体は温かいものに包まれていた。
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