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「日南子に触れたい」
真剣な表情。長い前髪から覗く、真っ直ぐで強い眼差し。
私は無意識に視線を下げて、大翔くんの薄くて形の綺麗な唇を見てしまった。
心臓がドクンと大きく跳ねて、私はそのまま弾け飛んでしまいそうだ。
「好きだよ」
そう言って、私の唇に温かくて柔らかいものを押し当てた。
窓の外は夕陽が沈みかけていて、藍色へと変化している。
空の低いところには、柔らかそうな綿雲がいくつも浮かび、そこに去り際の太陽の光が名残惜しそうに当たっていた。
ゆっくり離れていく顔と顔。
ほんの少しだけできた距離は、いまだに呼吸を忘れさせる。
「日南子の初めては、俺だけのものだ」
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