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人の醜い欲に
蘇武はあてられたのだ。
それが、蘇武の純粋だった心を
曇らせている。
何者にも染まっていない
白い心だったからこそ
染まるのも容易い。
「どうした?」
蘇武の表情こそは、
以前のものそのものであるが、
その実は大きく違っていた。
もう李陵の知っている
親友の蘇武はいない。
胸が締め付けられるように
苦しくなった。
(俺が何か言った所で、蘇武に纏わりついている穢れを取り除くことは出来ないだろな)
「いや・・・いい。飲もう、友よ」
険悪な空気は消え、
笑顔で蘇武は返した。
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