253人が本棚に入れています
本棚に追加
/734ページ
「で、大宛が要求通りに汗血馬を寄越さなかったから、奪うのか?」
「言葉を選べ、李陵」
「その通りじゃないか。これでは、かつての匈奴と同じだ」
どん!
蘇武が机に椀を力強く叩きつけた。
酒が椀から勢いよくこぼれ出る。
二人の間に険悪な空気が流れた。
李陵は、溜息を吐くと
次に尋ねた。
「誰が遠征軍の指揮を?」
「李公利殿だ」
「李公利か・・・」
かつて、李公利の元に李陵はいた。
麾下だったと言うだけで
彼に対して、何ら特別な感情はない。
才覚もなく、人の上に立つ器量もない。
立場だけを幸運にも与えられた、憐れな男である。
最初のコメントを投稿しよう!