戦乱の音

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「で、大宛が要求通りに汗血馬を寄越さなかったから、奪うのか?」 「言葉を選べ、李陵」 「その通りじゃないか。これでは、かつての匈奴と同じだ」 どん! 蘇武が机に椀を力強く叩きつけた。   酒が椀から勢いよくこぼれ出る。 二人の間に険悪な空気が流れた。 李陵は、溜息を吐くと 次に尋ねた。 「誰が遠征軍の指揮を?」 「李公利(りこうり)殿だ」 「李公利か・・・」 かつて、李公利の元に李陵はいた。 麾下だったと言うだけで 彼に対して、何ら特別な感情はない。 才覚もなく、人の上に立つ器量もない。 立場だけを幸運にも与えられた、憐れな男である。
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