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「ああ。そうだな」
三日後、蘇武は長安へ向かった。
李陵はその背を
静かに見送った。
不思議と寂しさのようなものはなかった。
何故なら、李陵の知る蘇武はもういない。
この日が最後に
李陵と蘇武が
顔を合わして、酒を酌み交わすことはなかった。
互いに匈奴の民として
再会するまでは・・・
時代は動き出すのである。
悲劇の渦が、
物語の登場人物を大きく飲み込んでいく。
李陵、蘇武の二人も
例外ではない。
この二人が
悲劇の渦の中心に身を置くことになるのだから。
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