第四章 予想外

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まさか、コイツと番になるなんてな。 菊川は、俺が中等部で首席入学を逃してから、躍起になって必ず追い抜いてやると目の敵にし続けてきた相手だ。 それ以前に、αの世代交流会で会っていたときから、こちらは偽装αであることを見抜かれないよう緊張して吐きそうだったというのに、舎弟を従え悠々と遊んでいる姿が目障りだったしな。 心象は最悪だった。 生まれながらの優生α。 他のαとは比べ物にならない、群を抜いて才能に恵まれた存在。 桜宮家の跡取りとして、αとして生まれるべきだった俺にとっては目について仕方が無い存在だった。 αとΩ以上の差があるのはわかっていたが、食らいつくために必死になって⋯Ωの俺でもαには負けないことを証明するために、必ず勝つんだと打倒菊川を目標にしてきた。 これまで掛けてきた時間も努力も、無駄、とは思いたくないが。 番になった現実と過去の自分を振り返り感慨に耽っていたら、菊川の歩みが止まった。 壊れ物を扱うような丁寧さで、ゆっくり下ろされたのは、ベットの上⋯上? まずは休めと言うことだろうか? 「確かに疲れているが、寝るなら先にふ、ろ」 ベタつく身体を起こす前に、上からのし掛かってきた菊川から微笑まれ言葉を飲み込んだ。 黒く艶やかな瞳が真正面から俺を見下ろし。 形の良い唇からは、熱い吐息が漏れて迫ってくる。 「可愛い、可愛い」「俺の番」「俺のもの」 より濃厚なフェロモンがその身から放たれ完全に押されてしまう。 まるで、愛の告白だ。 自分の番に甘く語りかけるフェロモンに、ゾクゾク身を震わせる。 誰だよ、お前っ 学園でどんだけα女子からアプローチされても、無視するか軽く笑ってα男子とばかりつるんでたくせにっ そんな顔見せられたら、俺でさえ顔赤くなるわっ 見られただけで妊娠しそうな破壊力、隠し持つなッ いや、持ってても俺相手にしてくんなッ だって、もう、俺はお前の番だから。 Ωとしての発情周期が無くなる代わりに、自分の番の発情、ノットが引き金になって応えるように身体が変わってしまっているんだぞ。 あれだけ番になることを拒んでおいて、なんでコイツは俺に発情してるんだよっ
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