9.ハマダさんの決意

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「確かに。最初の頃は随分おかしなことになってしまったことがありましたね。香凜の記憶や性格がちぐはぐになったりして…」 「記憶を付加して、共有化するというのは、我々チームにとっても手探りの取り組みでした。おっしゃる通り、何度も失敗し、その都度原因を追究し、プログラムに修正を加え改良する。その積み重ねで現在の姿があります。ここが重要なのですが、失敗するかもしれないという前提で作業に当たっておりますので、オリジナルの必要な部分のみを別の場所に一旦移して作業させていただくことが、安全ということを考えると止むを得ない措置と我々は判断したのです」 「それが日常的にコピーをしていたということですね。それなら何ら問題はないでしょう。彼らがやっていることとは全然違う。僕がそれを望んでいるのですから」 「問題なのは、目的ではなく、コピーをするという行為そのものなのです。コピーしたものが社外に流出したのであれば、即大問題でしょう。しかし、お預かりした奥様の記憶は、弊社のネットワークから一ビット足りとも外部には出ておりません。我々のチームが行うコピーと奴らが行うコピーは、同じように弊社のネットワーク上の端末で実行されていて、申し訳ないことに、作業記録にはその目的が残されないのです」  剛志は唾を飲み込み、ハマダさんの言葉を待った。
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