9.ハマダさんの決意

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「奴らは、我々チームがよく使っている端末まで突き止め、それをコピー作業に使うという周到ぶりでした。ここまでされると、コンピューターのネットワーク上のログでは、奴らのやったことと我々のチームがやってきたことに差異はない、そのような判断になってしまいます。もちろん、端末の管理にまで注意が及ばなかった私の不注意がそのような事態を招いてしまったのですが…」 「例えコンピューターの中のデジタルデータであっても、僕がこの十年間、会い続けてきた香凜には立派に人格があります。そりゃ、生前と比べると多少の反応の違いはあります。でも、生きていたって、十年も経てば性格だって随分変わってきます。大事なのは、香凜の性格や考え方が自然な形できちんと受け継がれているということです。そうでなければ、僕は会いに来ません」  ハマダさんは黙った。剛志は畳み掛けるように言った。 「たとえ一部であっても、香凜をコピーして、その中身を勝手に書き換えることを、僕は許すことができない」  ハマダさんはこれまで見たことのないような苦悶の表情を見せた。そして、絞り出すようにいった。 「話は最初に戻りますが、ですから高木様が奥様にお会いになるのは、もうお止めにした方が…、いえ、はっきり言いましょう、弊社との契約を解除なされることが、高木様と奥様の尊厳をお守りできる唯一の方法だと、私は考えました」
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