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「そう言えば…」
数分経って剛志が口を開いたとき、ハマダさんは世紀の大発見をしたかのように目を見開いた。
「機嫌が悪くなったのは、僕が函館に行ったことを告げてからです。彼女は『自分も行ってみたかった』と言っていました」
「旅行ですか…。確か高木様は函館に出張されていたのですね。そこには何か思い出でも?」
「二人で旅行をしたことがあります」
「それで『私も行きたかった』と」
「仕事に連れて行く訳にはいかないのに、これでふくれられても困るんですけどね」
ハマダさんは斜め下の方に視線を落とし、小さく何かを呟やいた。早速何かの解決方法を思いついたようだ。
「よろしゅうございましょう。次回までに奥様のご機嫌をお直し致しますので、ご心配なさりませんように」
別にこちらが頼んだ訳ではないが、ハマダさんは一つの結論を導き出したことに満足していているようだった。ハマダさんがこう言い切ったからには、次は必ず素晴らしい時間が過ごせるはずだ。これまでがそうだったように。
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