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人通りの多い場所、そして何より信号があるような場所では手を繋いで歩く。今よりもっと小さな子供の頃からずっと続けてきた約束事。もっと言うなら、決して揺るがせにしてはならない鉄則だ。
それなりにいい歳をした兄妹が手を繋いで街中を歩いているわけだが、もうお互いに嫌悪感も照れも無い。例えそれを誰に見られたとしても。ごく当たり前の行動だった。
先天色覚異常3型3色覚。
自分の妹がそういう眼の病気なのだと知った幼い頃、病名を聞かされてもちんぷんかんぷんだった。
どういう経緯で誰が気付いたのかはよく知らないが、うちの家族の誰かがそれに気付いて病院に連れて行き検査をして判明したらしい。確かに思い返してみると瑞穂が『色』というものに対してとんちんかんな事を言ったりしていた記憶がある。家で見た瑞穂の塗り絵は、見てるだけで不安になるような滅茶苦茶な配色だった。
一体何なのかと言えば、要するに色が識別できない。
3型3色覚というと青系統が上手く認識できないらしい。
子供の頃は大したことじゃないと思っていた。瑞穂が少し目を離した隙に、目の前で赤信号の横断歩道を渡って車に轢かれるまでは。
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