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安心してばかりはいられない。問題は朝よりも帰りなのだ。
高校で素敵な彼氏を見つけたいと思っているためせめてデマが消えるまで悠木くんと登下校を共にしたくない私は、帰りのHRが終わるとクラスメイトと話すことなくすぐに教室をあとにして足早に駅へと向かう。この調子ならいつもより数本早い電車に乗れそうだ――その行動が裏目に出るとは思わなかった。
定期入れを取り出しながら改札へと近づいた私の目が、見慣れた背中を捉える。
「えっ」
しまったと口を閉ざすも遅く、改札を通った悠木くんが私の素っ頓狂な声を聞いて振り返った。
「あ、仲矢さん」
せめて声を出さずに隠れるなりすれば良かったのにと悔いても遅い、目が合ってしまってはどうしようもない。
私はこっそりと息を吐いた。
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