惚れたもん勝ち

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 近道を教えてくれなかった悠木くんよりも、こういった考え方をする私のほうが何倍も嫌な奴だ。自覚が更に私を不機嫌にして、空気は悪くなるばかり。  そんな私と悠木くんの間に当然会話はないまま、電車は地元の駅に着いてしまった。  そしてその週のあいだ、私が悠木くんと顔を合わせることはなかった。  理由はもちろん、私が避けていたからだ。もうデマ問題以前に、あんな態度をとってしまったものだから本当に顔を合わせづらくなってしまい、徹底的に避け続けた。  偶然彼の背中を見つけてしまっても、間抜けな声を出すことはなくなった。こっそり距離をとってから隠れて、もう一本あとの電車に乗ってみたり。そこまでする必要があるのかと考えなかったわけではないが、きっと今の私には必要だった。  しかし、どれだけ避けていてもどうしようもないときはある。  翌月曜日の朝、いつもより遅い時間ではあるが念のため駅のホームに悠木くんがいないことを確認してから私は電車に乗り込む。その日は雨で、自転車で通勤や通学をする人が乗っているためか車内は混雑していた。
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