健全なる社会

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脅迫的――そう、東風平は半ば拉致されるような形でこの場に引き出された。 拉致された理由は、青少年に有害な出版物を発表したというものであった。 東風平凪彦は漫画家を職業としている。幼い頃から、多くの漫画を読み、夢を与えられた東風平は、絵が得意だったこともあり、いつか自分も同じように夢を与えたいと、その道へと進んだ。 東風平の作品は主に小学校高学年から、中学生くらいをターゲットにしたものであったが、 幸い、子供たちに高い評価を受け、単行本の売り上げも良く、アニメ化、映画化までされた。しかし…… 二十世紀末より、青少年の犯罪が重大な社会問題と化していた。 恐喝や傷害といった事件にとどまらず、放火、殺人、誘拐といった凶悪犯罪まで起こり、 政府も本腰で対策を練ることになった。 頭の堅い有識者連中が、一番問題視したのは、ゲーム、漫画、アニメ、インターネットなどが子供に与える悪影響であった。 確かに爆発的に拡大したこれらのメディアが、子供に対して与える影響は計り知れないものがあり、一部の過激な表現に対して批判の声が多いことも事実であった。 何よりも即効性のある対策を求められていたこともあり、結果として、国会に提案されたのが『青少年を有害情報より保護し、健全な育成を行う法案』、     
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