窮鼠猫を噛む

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口でされるのは初めてではない。初めてではないのだが、秀一はどうもこの行為が「やらせている」感がしてしまい苦手だった。 見つめあってきつく抱き合い、たくさんキスしながら繋がるオーソドックスでシンプルな行為が好きだった。露天風呂なんていうのはオプションだ。やり方に違いは出ない。 が、しかし。 あくまで苦手であって、嫌いではない。気持ちいいものは気持ちいい。 「ッ、ん…」 「奏真くん、いいよ無理しないで…ッ!」 「んー…」 ちゅぱ、と卑猥なような間抜けなような音を立てて奏真は口を離すと、苦しかったのか僅かに涙目になりながらじっと見上げてきた。その表情があまりに扇情的でゴクリと生唾を飲み込んだ秀一は、次の瞬間頬を痙攣らせた。 「…今日は俺上だから、ちょっと黙ってて。」 意味を理解するのに数秒。 「ちょ、アッ…ちょ、それまだ有効なの!?ちょっと待ッ…!」 奏真は秀一の話を少しも聞いていないようで、返事もせずに再び秀一のものを口に含んだ。 時折苦しそうに眉根を寄せる奏真にいくら声をかけても、やめようとはしない。進んでやってくれているのに無理にやめさせるのも気が引けて、秀一は奏真のサラサラした手触りのいい髪に指を通すと深く息を吐いて快感に身を委ねた。 甘受すると、ただただ気持ちいい。 気を抜いたら欲望のままに腰を突き上げてしまいそうだ。恥ずかしいくらいあっという間に暴発してしまいそうで、秀一は眼鏡を外すと腕で目元を覆い隠して波をやり過ごし、与えられる快感に耐えた。 どれくらい耐え忍んだのか、もしかしたらほんの数分のことだったのかもしれない。 秀一はいよいよ限界を感じ始めて、身体を起こして奏真の髪を撫でた。 「奏真くん…も、いいよ、出ッ…」 出るから離して、と全て言い切る前に、奏真は秀一を解放した。 ホッとしてゆっくりと息を吐いて気持ちをほんの少し鎮めると、秀一の上に乗っかっていた奏真がゴソゴソと身動ぎする。 ああ、ついに後ろの準備をされてしまうのかと背筋に緊張が走った時、秀一は下半身の張り詰めたものにぴたりとした何かが被せられるのを感じた。 その正体は言うまでもなく、いわゆるゴム。 ああ旅館の布団を汚さない為かなとどこか他人事のようにそれを受け入れてぼうっと奏真を眺めていた。 秀一の股間に顔を埋めていた奏真が再び跨ってくる。浴衣を捲り上げ、男の割に白く細い足が剥き出しになっている。思わず手が出てその滑らかな腿を撫でると、ちょっと照れたようにニコッと微笑まれた。 あ、可愛い。 デレッと気を抜いたその瞬間、いきり立ったものが狭く柔らかい温かな場所に包み込まれ、凄まじい快感に目の前がスパークした。
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